共演者:宮西純(テューバ)
ジョン・ウィリアムズ:テューバ協奏曲
【ソリスト・アンコール】エンニオ・モリコーネ(大橋晃一編曲):映画『ミッション』より《ガブリエルのオーボエ》
(休憩20分)
アーロン・コープランド:交響曲第3番
原田慶太楼さんの指揮でオール・アメリカン・プログラムならば行かないわけにはいかないということで、聴いてまいりました。
プレトークによりますと、《キューバ序曲》のリハでは、打楽器セクションがとても日本人らしく「真面目」だったということで、もっと踊って、だったかな、リズムのノリを出すようなことをやっておられたようです。弦楽器の主旋律が出るまでの打楽器が、下手後方ながら、ものすごくよく聴こえてきて気持ちが良かったです。ちなみにガーシュウィンは、キューバン・スティック(クラベス)、ボンゴ、ゴード (ギロ)、マラカスは指揮台の前、つまり指揮者とオーケストラの間に配置し、観客から見えるようにし、打楽器セクションの中に隠れてしまわないようにすべきであるという指示をスコアのタイトル・ページに書いていました。さすがにそれをやる人はいないとは思いますが…。
また原田さんの指揮は、弦楽器の旋律のスケール感を強調させるようアクションだったようにお見受けしました。中間部においても、弦楽器の重要な役割を再認識。また私的なサプライズとしては、曲の最後ではベル・トーンに合わせて、演奏するセクションが立ち上がり、原田さんが客席に振り返って手拍子を促したというところです。こういう「演出」は初めて体験したかもしれません。なお、最後のから2小節目は通常通りです(3回演奏ではありません)。
ジョン・ウィリアムズのチューバ協奏曲は、いわゆる折衷主義路線としてはバーンスタインやコリリアーノに通ずるところがある作品といいますか、シリアス(=クラシック)側にぐっと寄せつつも、ところどころ、やっぱりJWだな〜という箇所が聴こえてくるといったところでしょうか。第1楽章のチューバにはカデンツァもありますが、ガチのソロの部分だけではなく、ホルンとシンクロして「拡大されたソロ・カデンツァ」みたいになっているところが個人的には好きな箇所だったりします。
どこかしら都会的感覚がある第2楽章に続いて、第3楽章は「ヴィルトゥオーゾ」という言葉が適切かどうかは分かりませんが、とにかく技巧的にも圧倒的される情報量の音楽でした。客席からの盛大な称賛も納得です。こういうロジカルな展開って、やっぱり「楽天的なアメリカ」だけでは分からないアメリカ人の感覚があるような気がするんですよね(コリリアーノしかり)。
原田さんのプレトークで印象的だったのが、コープランドの交響曲第3番を演奏するには、やはりこの曲が発表された歴史的な文脈があるというお話でした。「日本人がこの作品を日本で演奏するにはちょっと苦いところがある」というところからのお話で、この第3交響曲が終戦後の戦勝国で書かれた曲である一方、単純にその勝利を謳歌している(原田氏の言葉では「セレブレーションする」)作品なのかのかどうか、という点。すなわち、第1楽章から第3楽章にかけては、けっこう「複雑な心境になる」という点。一度終戦をむかえ、次をどういう気持ちで進んでいけばいいのかということはこの曲は問うているのではないか、ということでした。これは確かにそうだなあと思うところがあります。映画だと『我等の生涯の最良の年』の世界観ということになるのかな、と想像してみたり。特に第1楽章と第3楽章の捉え方、あるいは第4楽章の、不協和音で流れが止まる以降の捉え方というのに、これらは強く影響してるかなあ、と思いました。
そのコープランドですが、第1楽章と第2楽章をアタッカで演奏するというのは、個人的に初めてではないような気がするのですが、第1楽章が終わり切る前に、金管楽器が構え始めると「おおおっ」という感じですね。
そして今回特に魅力的に感じられたのは第3楽章でした。特に後半にかけて弦楽器がうねうねと続いていく箇所がこれまでイマイチ取り留めが感じられなかったのです。ただ、その後の石田さんのヴァイオリンの美しいハーモニックスの独奏部分がつながってきて、「なるほど、こういう面白さなのかな」というのが分かりました。あのモヤモヤした感じがそのまま出て行くのが面白いのだといいますか。それで独奏ヴァイオリンで昇華されていく感覚といいますか…そこからの第4楽章といいますか。ちなみに第4楽章のコーダは「バーンスタイン・カット」でしたでしょうか? 初演の楽譜は新しい指揮者用スコアやブージーの古い版には掲載されていますが、あれで演奏する指揮者はスラットキンくらいでしょうか???
それにしてもコープランドの交響曲第3番って、全体的に非常にマッチョな曲ですよね。オーケストラの管楽器も大変だったと思いますが、その分、聴いている側も感動が得られたと思います。変拍子も多く、いろいろ罠な箇所もあるでしょうけれど、原田さんのリードで、とてもエキサイティングな演奏で面白く聴けました。会場のほうも、おそらくオーケストラの醍醐味が感じられて、特にクラシックになじみのない人ほど楽しめたのではないでしょうか? (横浜みなとみらいホール)