The Kostelanetz Touch. ASV (Living Era) CD AJA 5422.
『コステラネッツ・タッチ (The Kostelanetz Touch)』はSP時代のコステラネッツ楽団の録音を集めたCDです。19世紀後半以降、少しずつ分離の道を進んでいったクラシックとポピュラーという2つの音楽ジャンルを融合したのが「セミクラシックということであれば 、 まさに、この録音はクラシック色を強く残したセミクラシックの王道という感じがします。その要因の一つは弦楽器を多く含む大オーケストラによる演奏であることと、録音があまりマルチくさくないところでしょうか。その点、同じコステラネッツでも、例えばステレオ時代の、軽いオーケストラによる、マルチ録音に聴かれるような「ムード音楽」っぽさがないといえるかもしれません。
このCDで個人的に好きなのはトラック7の《ジェローム・カーン・メドレー》です。というのも、コステラネッツが1955年に初来日してNHK交響楽団を指揮した録音があるのですが、《ショー・ボート》(管弦楽編) の熱い演奏にものすごく感銘を受けたからです。
ちなみにN響による《ショー・ボート》の演奏情報は楽団の演奏記録アーカイブにはありませんでした。記録に残っている演奏会は10月8日 (土) 、18:30 に日比谷公会堂で行われたのですが、《ショー・ボート》は演奏曲目には入っていないのです。同曲が演奏されたのは10月5日 (水) 21:15 からの放送(テレビとラジオの同時中継)で、お客さんを入れたNHKホールで演奏されたようです (放送開始時刻が21:30となっている資料もあるのですが、演奏曲目を解説を入れずに演奏しただけで38分になってしまうので、45分の放送時間、という方が正確なような気がします)。
ところで私が最初に「聴いた」N響の《ショー・ボート》は、同楽団の過去の名演を振り返る白黒映像でした。長い指揮棒を降るコステラネッツにビシっとパンチの聴いたオーケストラ。私は世代的にコステラネッツをリアルタイムで楽しんではいないのですが、この力強い演奏には心を打たれました。Spotifyへのリンクを貼っておきます。音が割れていたりしますが、ステレオ録音ですし、会場の迫力が伝わる貴重な記録だと思います(ちなみにコステラネッツの来日目的は「観光」であり、9月27日に羽田に到着予定だということで、それを機にN響を指揮してもらうことを企画したようですね)。NHK交響楽団以外にも、この《ショー・ボート》をコステラネッツが演奏した録音がないものか、探していたのですが、The Kostelanetz Touch所収の録音とは同一ではなかったりします。《ジェローム・カーン・メドレー》の内容はSmoke Gets In Your Eyes; Yesterdays; Why Do I Love You?; You Are Love; Ol' Man Riverの5曲で演奏時間は9分近く。前述したように、これはこれで悪くないです。
Music of Jerome Kern というアルバムにも《ショー・ボート》のセレクションが入っています。トラック7と8で、前者はMake Believe; Bill、後者はWhy Do I Love You; You Are Love; Ol' Man Riverということで、後半3曲は共通ですね。Kostelanetz Touch はSP音源ですが、Music of Jerome Kernは ColumbiaのモノラルLP時代なので、もう少し音は良いです。アレンジも大オーケストラですが、N響より軽いフットワークかな? でも Ol'Man River の引き締まりはN響に軍配を上げます。
コステラネッツの《ショー・ボート》の録音は、Scenarios For Orchestraというアルバムの最初のトラックにも入っていて、これは22分あまりの交響詩といった趣です。じっくり味わうということになると、これなのかもしれません。改めて聴いてみると、これも素晴らしいです。(2004-08-21初版執筆、2026-09-04大幅に加筆)
0 件のコメント:
コメントを投稿